「ホッとしたのもつかの間、また大きな難問にぶっつかりました。
ある特定の状態の下では、カーボンシールにピッティングという虫食い現象ができて、性能が落ちてしまうのです。
特定の状態というのは"ドクター・モード走行"といわれている都会地のノロノロ運転のことです。
夜間に急患に呼ばれた年配の開業医が、まだエンジンが十分にあたたまらないうちに始動をかけ、ごく短かい距離を慎重に運転してすぐ停まる、また次の患者のところへ短距離を走って停まる、という状態によく似ているから"ドクター・モード走行"というのでしょう。
このような運転を続けるとピッティングができてガスがもれやすくなるのです。
これもカーボンの顕微鏡的な組織観察を続けて、ついに克服しました。
完成したのは昭和45年で、マツダさんと共同研究をはじめてから6年かかりました」
街中を走る乗用車や中古車トラックには致命的な問題ですが、これも時間をかけてクリアしていきます。